ご挨拶 – 学生・研修医の皆様へ

平成29年1月1日付けで京都大学大学院医学研究科 内科学講座呼吸器内科学分野の教授に就任致しました。

当教室の起源は、昭和16年に開設された結核研究所まで遡ります。当時、結核は高い死亡率を示し、わが国にとって大きな問題でしたが、その後、医学の進歩や時代の変遷とともに昭和42年に結核胸部疾患研究所となり、昭和63年に胸部疾患研究所と改称されました。当時の研究所の内科系は、第一内科、第二内科、臨床生理学の3部門から成っておりましたが、平成10年に改組して現在の講座となりました。

呼吸器内科の特徴として、がん、感染症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害など疾患が多岐にわたること、また、しばしばこれらが合併しうることが挙げられます。さらに、他臓器の疾患とも関連がみられたりしますので、多彩で複雑な分野です。次に、患者数の多さと専門医数の少なさが挙げられます。日本人の死因をみても、肺がん、肺炎、COPDが上位に位置しており、高齢化が進むわが国においては、今後さらに患者数が増加していくと予想されます。入院・外来を合わせた患者数でも、内科系で呼吸器疾患は、循環器疾患、消化器疾患とほぼ同数です。しかし、呼吸器内科の専門医数は、循環器内科や消化器内科の50%未満でしかなく、きわめて不足しています。また、呼吸器病学は近年、格段の進歩を遂げてきましたが、肺がんをはじめ呼吸器疾患の根本的な治療法はまだまだ不十分であり、疾患が慢性化、難治化する病態も多くみられるようになっています。

このような課題を抱えた現状に対し、優れた人材の育成、他科や地域との連携を密にした診療や、新規治療法の開発などの研究を推進していくことが望まれます。長い歴史の中で多くの諸先輩が築いてこられた伝統を受け継ぎつつ、呼吸器内科学のさらなる発展をめざして、努めてまいりたいと考えております。
皆様方のご指導、ご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

京都大学大学院医学研究科 呼吸器内科学
平井 豊博