患者の皆様へ

外来診察

初診の患者さんは初診外来で診療にあたります。初診であっても下記の各種専門外来を事前に予約され、医師宛の紹介状をお持ちの際は、専門外来を受診いただくことが可能です。

間質性肺疾患

間質性肺疾患には多種多様な疾患が含まれており、治療法が確立していない疾患も多い。このため、その診療には専門的知識を要する。

当科では間質性肺炎、サルコイドーシスを中心に臨床経験を蓄積し、国内外において、間質性肺疾患の診療センターとしての位置づけを獲得してきた。間質性肺炎の診断においては膠原病の鑑別が重要であり、時に肺病変が先行する症例もある。当科では免疫内科と連携してRNA沈降抗体の測定を研究室レベルで行い、早期の膠原病肺の鑑別を行っている。

また、進行期にしばしば認められる肺高血圧症の診断、治療に重点をおき、定期的なスクリーニングと積極的治療を行っている。近年原発性肺高血圧症において効果が確認されつつあるボセンタンやベラプロストを間質性肺炎に合併した肺高血圧症に対して用い、一定の効果をあげるとともにその治療経験を国内外で発表している。

近年間質性肺炎の病態に血液凝固異常が関わっている可能性が認識されつつある。間質性肺炎の急性増悪は致死率の高い難治性の病態であるが、時にDIC傾向を併発するなど血液凝固能の異常が示唆される。このような病態に対し、当科では抗凝固療法、非侵襲的陽圧換気、蛋白分解酵素阻害薬等の治療を試み、その効果を検証している。

サルコイドーシスについては、肺野の難治性線維化病変のみならず、気道病変、肺高血圧症といった特殊な病態にも注目して診療を行っている。京都中央診療所の専門外来との診療連携をとり、様々な臓器病変に関する診療経験を蓄積している。

COPD

慢性閉塞性肺疾患 chronic obstructive pulmonary disease:COPDとは、タバコ煙などの炎症性の粒子を長期間吸入することによって、気管支や肺胞に慢性炎症が生じ、気管支が狭くなり、肺胞破壊=肺気腫が生じることにより、肺機能障害が慢性的に進行する疾患です。

【COPDの原因と疫学】

COPDの原因の多くは長期間に及ぶ喫煙ですが、喫煙以外にも、職業的な粉塵曝露などでも発症すると言われています。しかしながら、たとえば喫煙者が全員OPDを発症するわけではなく、大体喫煙者の20%程度が発症すると言われています。当教室が京都府下の診療所の先生方にご協力を頂いて約2,500名の他疾患の患者さんの呼吸機能を調べた結果でも、大体喫煙者の20%内外に閉塞性障害というCOPDに特徴的な呼吸機能障害を認めました(図1)。 日本の疫学調査では男性の13.1%、女性の4.4%、40歳以上では8.5%=530万人が罹患していると推定されている頻度の高い疾患です。WHOの調査では,COPDは世界の死亡原因の第4位にランクされており,2000年には世界中で274万人が死亡したと推定されています。さらに,今後も死亡率は上昇し,2020年には死亡原因の第3位となると予測されています。

【COPDの症状】

この病気に罹患することによって、慢性の痰や労作時(階段を登ったり走ったりしたときの)息切れといった症状を伴いますが、疾患の進行が緩徐であり、比較的高齢者に発症することが多いので、「たばこのせい」で片付けられてなかなか診断されないのが現状です。当科に紹介されるときにはすでに疾患が相当進行していることも稀ではありません。また、病初期には症状がないことも多く、呼吸機能検査でのみ異常が判ることも稀ではありません。

【COPDの治療】

COPDの治療にはなんといっても禁煙が必須ですが、禁煙後も障害された肺は正常には戻らないとされております。そこで、呼吸機能を正常に近づけるために・あるいは悪化を防ぐために、様々な薬剤治療・リハビリ・栄養療法などを組み合わせて治療を組みたてていきます。また、病状が進行して、低酸素血症を来たした患者さんには酸素療法、重症の方には在宅人工呼吸療法や、肺移植・肺気量減量術といった外科的治療など、各種の治療法の最適と考えられる方法を選択して治療戦略を考えています。

それらの判断材料として、まず自覚症状の正確な把握のためにCOPD症状日誌をお渡しして、御自身に自覚症状の変化をチェックしていただいております。これにより、「風邪」などにより急激に呼吸状態と全身状態が悪くなること(急性増悪や、増悪といいます)を早期に発見し、早期治療を行うことによって、病気の悪化を予防し、健康状態を保っていただくことを目標にしております。このように症状把握と、各種呼吸機能検査・動脈中の酸素濃度、気管支拡張薬による呼吸機能の改善度、画像診断・血液検査などの結果を総合して治療方針を考えております。特に呼吸機能検査では身体に負担の少ない気道抵抗の測定法(impulse oscillometry)をいち早く導入、また画像診断では高分解能CTによる気腫病変・気道病変の正確な把握と病態の解明(図2) を世界に先駆けて行ってきました。喫煙経験者のCOPD患者さんは肺癌を合併することも稀ではありませんの、CT併用による肺癌の早期発見にも努めています。また、当科では従来から運動負荷試験を実施し、患者さんの息切れの原因を全身的に評価し、治療方針の決定に役立てるとともに、COPD管理における運動能力評価の有用性を確立してきました。その過程もあり、当院では、呼吸リハビリテーション療法も治療に積極的に取り入れております。

また、私達は、このような検査だけではなく、患者さんの視点にたった医療を重視するべく、患者さんのQOL(生活の質)や呼吸困難、日常生活活動などを、「質問票」とよばれるアンケートを用いて、評価しています。こうすることによって、通常の診察や検査では測れない患者さんの主観を客観的、定量的に分析することが可能になり、私達の医療が、本当に患者さんの症状やQOLの改善に貢献しているのか検証しています。

これらの外来での経験をもとに、臨床データを多面的に解析し、COPDの病態解明と診療の改善に努めています。

なお、COPDの主原因は喫煙ですが、喫煙経験者は肺疾患以外に、心疾患、糖尿病、骨粗しょう症、消化性潰瘍など多彩な病気を合併しやすいことが知られています。また、肺以外の癌の合併も稀ならず見られます。禁煙・COPDの管理とともに、喫煙関連の他疾患の管理・発見は極めて重要ですので、是非ホームドクターを持たれて、COPD外来と提携して総合的に健康管理されることをお勧めしております。

喘息・慢性咳嗽

喘息は患者数が最も多い呼吸器疾患の1つであり、当科の外来にも約1000名前後の患者さんが定期通院されています。喘息は、色々な刺激に対する気道(気管・気管支)の過敏性亢進を特徴とする慢性炎症性疾患で、気流閉塞(気道が狭くなること)によって喘鳴、呼吸困難、咳といった自覚症状が現れます。喘息の治療において自覚症状のコントロールは大切ですが、症状だけを目安に治療を行っていると気流閉塞や気道炎症が残ってしまい、発作を起こしたり、気道リモデリングといって気管支の壁が厚くなったり硬くなってしまったりすることもあります。当科では呼吸機能(スパイロメトリー、ピークフローモニタリング)、誘発喀痰、呼気中NO濃度測定などの検査によって患者さんの状態を客観的に評価し、その結果も目安として吸入ステロイド薬を中心とする治療を行っています。看護師さんや薬剤師さんの協力も得て十分な吸入指導を行い、また気道炎症や気道過敏性を引き起こす抗原(アレルゲン)、喫煙などの悪化要因を避ける指導にも力を入れています。吸入ステロイド薬を中心とする薬物療法の進歩、普及により最近の約20年間で喘息の治療成績は飛躍的に向上しましたが、高用量吸入ステロイド薬を中心とする強力な標準治療によってもコントロールが困難な重症難治性喘息の患者さんも少なくはありません。当科ではCT画像やインパルス・オッシレーションなどの最新の検査方法も用いて患者さんの病状を詳細に把握し、喘息以外の種々の合併症の評価も十分に行って、最善の治療を目指しています。好酸球性肺炎、アレルギー性気管支肺真菌症、アレルギー性肉芽腫性血管炎、種々の原因によるアナフィラキシーなどの難治性アレルギー疾患も数多く診療しています。

咳(せき)は患者さんが医療機関を受診する動機として最も頻度が高い症状であり、特に近年は長引く咳を訴えて受診する患者さんの増加が指摘されています。慢性咳嗽は、8週間以上持続し胸部X線の異常を伴わない咳を意味する各国共通の用語であり、本邦では咳喘息(咳だけを症状とする喘息)が最も多く、副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流症なども主要な原因疾患です。上気道炎や百日咳などの感染症のあと咳が長引くことも少なくありません。長期にわたる咳は患者さんを消耗させ、QoL(生活の質)を低下させるため治療を要しますが、中枢性鎮咳薬(いわゆる咳止め)はしばしば無効で、また痰や異物を体外に排除するための生体にとって必要な咳も押さえ込んでしまうという問題があります。従って、咳の原因をできるだけ見極めて原因に応じた治療を行うことが大切です。当科では、全国に先駆けて慢性咳嗽の専門外来をいち早く開設し、多数の患者さんの診療に携わってきました。詳細な病歴聴取とともに、各種問診票、呼吸機能検査、気道可逆性試験、気道過敏性試験、誘発喀痰検査、呼気中NO濃度測定、カプサイシン咳受容体感受性試験、CT画像、インパルスオッシレーションなどの最新の検査技術を駆使して、診断、治療に成果を挙げています。

このような診療の実績から、私共は本邦における喘息、咳の診断・治療指針(「喘息予防・管理ガイドライン」「日本呼吸器学会咳嗽に関するガイドライン」)の作成委員も務めており、さらなる診療レベルの向上を目指して日々臨床や研究に取り組んでいます。

感染症

感染症法に基づく指定医療機関として、主に京都市在住の方や当院他科で加療中の方を対象に肺結核診療にあたっているが、肺結核の減少とともに年間新規登録患者は50名程度となっている。一方で、特に中高年の女性の間で増加しているのが肺非結核性抗酸菌症で、当科外来には確定例で約150名、疑い例も含めると200名以上の方が定期通院されており、その約7割が女性の方である。非結核性抗酸菌は結核と異なり他者への感染性を有さず、本疾患の進行は緩徐とされる。しかしながら、有効な抗菌療法が確立しておらず、進行例では呼吸不全に至ることもあるため、生涯にわたった管理を要する場合がある。気管支拡張症と診断されていた方の中にも本疾患が含まれている場合があり、CTによる画像診断はこの疾患の早期発見に有効で、検診からの紹介例も増加している。当グループではCTを中心とした新たな画像解析法の確立などの研究を通じて本疾患の病態解明を行いつつ、よりよい医療の提供を心がけている。

肺炎については、肺癌、間質性肺炎、COPDなどの呼吸器疾患を有する当科通院中の方や移植関連、免疫抑制者や癌などで当院他科にて加療中の方を中心に、各主治医と連携しながら、診療およびコンサルトを行っている。本邦における肺炎の死因順位は第4位と依然高く、なかでも薬剤耐性菌の蔓延は重要な課題である。当グループでは、市中肺炎で最も頻度の高い肺炎球菌の薬剤耐性に関する多施設疫学調査に参加してきたが、今後も検討を継続し、本邦での肺炎の実態を明らかにしていきたいと考えている。

肺がん

がんは1981年以降、日本人の死因の第1位であり、3人に1人はがんで死亡するとも言われています。なかでも近年肺がん患者数の増加は著しく、2007年度には65,000名あまりの患者さんが肺がんのために亡くなられています。肺がんは罹患者数・死亡者数とも今後さらに増加していくと考えられており、有効な治療法の開発が喫緊の課題となっています。

肺がんは組織学的に大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2種類に分類されます。また肺がんの進行度の目安としてTNM分類という基準が用いられています。治療の3本柱は手術、放射線、化学療法(抗がん剤)であり、がんの種類と進行度に基づいて適切な治療法が決定されます。呼吸器内科では、肺がんの診断から治療まで一貫して行っており、また胸膜中皮腫や縦隔腫瘍などの肺がん以外の胸部腫瘍の診療も行っています。

呼吸器内科では、週1回の呼吸器内科全体カンファレンスとは別に、入院中の肺がん患者さんについてグループカンファレンスを行い、治療法の詳細な決定を行っています。また、呼吸器外科や及び放射線治療科と共に週1回のカンファレンスを行っており、一人一人の患者さんの病状に応じた集学的治療を行っています。化学療法を行う場合には、通常1コース目は入院で行い安全性を確認したのち、通院治療に移行します。通院治療は、外来化学療法部の担当医師のもと、外来化学療法室で受けていただきますが、患者さんには同時に呼吸器内科担当医師の外来にも定期的に通院していただきます。呼吸器内科と外来化学療法部は、通院治療を受けておられる患者さんについて定期的にカンファレンスを行っており、情報を共有しながら二人三脚で治療を行っています。

肺がんの治療成績は年々進歩しているものの、まだまだ満足できるものではありません。当科では先端医療施設として臨床試験を行うと同時に、患者さんのご協力のもと遺伝子の解析なども積極的に行っています。それが目の前の患者さんに最新の治療を提供し、なおかつ将来の患者さんにより有効な治療をとどけることにつながると考えているからです。京都大学呼吸器内科は臨床試験を通じ、日本のみならず世界の医療の発展に貢献していきたいと考えています。

呼吸管理・睡眠時無呼吸、神経睡眠外来

睡眠時無呼吸は頻度の高い疾患で、高血圧、糖尿病、虚血性心疾患などの生活習慣病で頻度はさらに高まります。従って生活習慣病の治療と伴に睡眠時無呼吸の治療も重要です。日中の過度の眠気も日常生活に支障を来します。神経内科に関連した睡眠外来も行っています。多くの科と連携して京大病院には約400名の睡眠時無呼吸患者が通院中です。マスク式在宅人工呼吸患者も約30名毎月通院されています。また、移植医療、術後を含め病院内で発生する呼吸器合併症の管理に積極的に加わり、京大病院の高度先端医療の遂行に貢献しています。


http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/patient/index.html:京都大学医学部附属病院(外来診療)